はじめに──穴を大きく、よく混ぜる

家庭での“ミニ園芸”がさかんです。入門書と首っぴきの園芸ファンも多いことでしょう。しかし、本から得た知識では、なかなかそのとおりにいかないこともしばしば。そこで、下辰野胡桃渕で南荘園を経営する“植物博士”吉江清朗さん(67)に「園芸事はじめ」と題し、土作りから植物の育て方まで、本日から週一回連載いたします。
伊北諏訪地区は植物を作る場合に全国的には特殊の内陸・高冷地です。従って一般図書や指導では失敗をよくします。また昔から習慣や教育の中にも不合理や誤りがあって、いろいろの失敗をします。失敗しないで、よく育つための基礎的な知識と作業を中心として書いてゆきたいと思います。
まず皆さんから最初に聞かれるのは肥料は何をやるかとの事ですが、栽培については最も後の問題です。花作り野菜作りの第一歩はよく根ののびる土作りです。茎葉がよく育つためにはそれぞれの植物に適当な土が必要です。軽い土を好むもの、重い土を好むものもありますが、根を十分にのばし十分に水を吸えてはじめて茎葉が生長できます。根が生長するためには土の中にも適当な空気がなければなりません。さらにそれぞれの植物に必要な光線と温度があります。
自然ではいろいろの植物が一緒に生育しています。お互いの枯れ葉や枯れ枝と共に根も次々と生長し枯れて、土壌微生物の力を借りてお互の肥料となってゆきます。土の中に空気や有機質の腐ったものが沢山あるほど植物はよく生育します。硬い土に植物を植えて化学肥料をいくら施しても植物は育ちません。肥料をやりすぎると根が焼けるように枯れてしまいます。根が十分のびられるように植え穴は大きく掘って、腐葉土等を十分に土に混ぜたり、鉢植えの土に落葉や堆肥等を多く混ぜることが必要なわけです。
   (辰野朝日新聞・昭和56年5月9日掲載)

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園芸事はじめ/信州でガーデニングを楽しむためのエッセイ集