植物をつくる時に最後であるべき問題が肥料であるが、どうもこの事を早く知りたいようだから、不本意ながら一言しておく。
皆根を作らないで、沢山の肥料をやるので更に根をいためてしまう。手足の切傷に塩やアルコールをつけるとしみる。植物の根に濃い肥料をやると、根にしみるどころか枯れてしまう。自分の傷にしみない程度のうすい塩気やアルコールの濃度程度の肥料なら、根は順調にその肥料を吸って生長することができる。
化学肥料をその植物に吸える程度の濃さの水肥にするには1リットルに対して1グラムでは大概の植物に濃すぎる。普通の追肥に使う化学肥料は大体2リットルに1グラムで丁度よい。それを6号鉢なら10鉢以上に与える。うすくても多すぎればやはり害がある。色々の本に書いてある1週間に一度の追肥は多すぎる。そんなに施肥するから更に肥料負けする。沢山に肥料を使えば肥料屋がもうかり、苗が枯れれば種苗商がもうかるだけである。それでは本物の花作りにならない。
油粕や鶏糞をそのまま多量に施すことは最も根を傷めるから一度腐らせたものを少し使いたい。化学肥料はくれぐれもやりすぎぬように。幾分多目にやってよい場合は砂植えとか腐植質の多い培養土の場合である。
来年に花や実をつけたい木の類には6月中旬から7月末まで2〜3回に分けてから肥料を施すとよい蕾をつくることができる。
(辰野朝日新聞・昭和56年6月13日掲載)
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