挿し木──高温多湿で強い光線が必要

梅雨期は木の挿(さ)し木の適期です。草物もすぐ発根しますが、木物は梅雨期間中に発根するが、発根する組織を穂の下端に作らせておきたいです。ただ今年は異常天候で例年のように新梢の発育がすすんでいません。葉がのびきっていないので、特に空中湿度を高めて挿し穂がしおれすぎぬように気をつけます。空中湿度さえ高ければ挿し木数日以後は光線は強い方がよいです。特に一定の空中湿度を保つため密閉挿しをします。密閉挿しはさした後に十分灌水したら、曲げた針金で穂の高さの3倍位の高さに框をつくり、ポリ等で覆っておきます。これを日向におくと中の温度が高すぎることがあるので、幾分日照をさえぎるために、半日蔭の所におきます。高温多湿で光線の強いことが大切で、高温限界は30度です。
挿す土は鹿沼土や富士砂とかピート等の保湿性のあるものが最適。砂のあまり細かいものは不適当です。発根しにくいものは下の切り口に発根剤のルートン等を塗ったり、赤土ダンゴをつけます。
普通の挿し木は新しくのびた枝を使いますが、ツツジ類やツバキ等は大枝挿しをすると早く大きな苗が得られます。2〜3年生の枝を2分の1以上に枝や葉を抜き切り、穂の3分の1を深く挿しつけます。ツバキは1年で発根しない場合があります。
当地は夏の空気の乾燥が全国的に最もひどく、発根しにくいため特に空中湿度を高くするようにつとめねばなりません。
   (辰野朝日新聞・昭和56年6月20日掲載)

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