夏から初秋の灌水──露地は隔日、十分に

耕したばかりの土と長く耕さなかった土は、土の中の水分や雨や灌水による水分の動きに大きな差がある。深い所の地中水分は夏の地表温度の変化に伴って地表にしみ出して蒸発量が他の季節より多い。夕刻はカラカラのようでも朝はしっとりとしてくる。夜底温なら空中の水分が露となって植物の表面や地表を湿らすが、日中の高温ですぐ蒸発してしまう。こんな関係で、土の構造によって夏の地表の乾燥度は大変な差ができてしまう。
地表が高い草木で覆われている時と低い草で覆われている時は裸地より地表の乾燥の程度が異なる。地表を覆っているいわゆる地被植物のある場合は、灌水すると水は地中深くしみ通ってゆく。日向でカンカン照りの裸地は太陽熱で地表の土の粒子が細かくなって灌水や降雨の時の水は地表近くにとどまって、少しばかりの水では深くしみ通ってはゆかず、次に日が当たるとすぐ乾いてしまう。鉢植の植物は深い土壌水分があるわけではないので、鉢土が全部湿めるような給水をしないとよく育たない。従って鉢土の乾き切らぬうちに灌水が必要である。
露地についての灌水は毎日少しずつするよりは今までの1日分を隔日に2日分とか3日目に3回分、要するに灌水するときには深く湿めるまで十分に水を与えることが有効である。芝生は非常に乾きやすく、浅根性であるが、毎日十分灌水するとのびすぎてむらができやすいので隔日に十分灌水する方が美しい芝生になる。こんな考えで夏の灌水をする。
   (辰野朝日新聞・昭和56年8月29日掲載)

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