越冬作業[2]──まず観察を

花作りが気ちがいじみてくるとあれもこれも集まって、夏の間は兎も角、冬が大変である。これを捨てることができるようになったらベテランと言える。特に厳寒で、低温期間の長い当地では冬入りがこの捨て時である。ただ抜いて捨てるのでは芸がない。必要最小限をその耐寒温度と確保できそうな冬の保加温設備とその収容力をよく考えて、無理をして冬越設備の中に収容しない事が必要である。収容しきれないものは耐寒性や耐乾性を観察するために、戸外や軒下に放置して見ることをすすめる。1軒の家の中や外、塀際や木の下、時には庭石の南側か北側かでも冬越しの状態が異なってくる。肥料や植え替えはどの様にやるかを考える前に、栽培の基礎となる冬の自宅や設備の環境を知るための積極的な試みをはじめる時期である。温度と空気の乾湿あるいは寒風を受けるかどうか等の観察は自分でしなければならない。私自身でもこの場所ならこんな方法で冬越しできるだろうと思っていてもすべてを実験することはできない。折にふれて方々見ていると、昔は考えられなかった暖地性の植物が戸外で越冬していたり、恐らくは苦労して越冬させたものが見受けられる。
寒い霜の朝夕が訪れると、暖かい所に移すのはよいが、11月と12月は冬の寒さに耐えさせるために暖めすぎないように。また凍らせたり、外観は何でもない様な軽い風邪程度の凍害を受けさせぬように。
   (辰野朝日新聞・昭和56年11月7日掲載)

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