移植のできないと言い伝えられている植物や移植の難しいと言われている植物は多い。どんな植物でも何時でも植えかえて簡単に活着するものではない。
最初に植えかえのできない植物として著名なのはケシの類である。普通にだれでも栽培してよいオニゲシ・ヒナゲシとハナビシソウ(エスコルチア)やアイスランドポッピーは低温の時と苗の小さいうちは植えかえても大丈夫活着する。しかし、春になって花茎が伸び始めようと生長を開始してからは、もし活着しても元気には育ってくれない。宿根になるオニゲシ(本当はハカマオニゲシ)は太い直根があり、当地では初夏開花後7、8月は葉は枯れて休眠し、9月に入って新葉がでてくる。9月にこの直根を掘って太い所で3センチ以上に切って根挿しすると元気な株は翌春開花する。リンドウとかトルコキキョウは幼い実生や古株も長い根を切ったり、その根をまるめて植えたら活着しない。生長のある期間、例えば小苗の時とか休眠期、完全に開花期の年齢に入った草木でも植えかえのタイミングを誤れば活着しない。この事は野生状態に近い性質のものほど移植活着期が限定されてくる。普通の鉢物として扱われる植物は既に移植されやすいように人間に順化されているので、移植だとか挿し木が容易にできるのである。
(辰野朝日新聞・昭和57年11月6日掲載)
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