繁殖は実生の株分けと挿し木である。株分けは3月末から4月上旬の発芽してくるころがよく、新芽が長くのびると活着が悪い。太い根の塊は思い切って縦に刃物で切るがよい。中心の茎から白い太根が出て、その先に細根がある。芽は主に上端にある。太根は折れやすい。あまり小さく株分けしようとすると根が皆かけておちることがある。
植えつける場所は夏ちょっと日陰になる所で、やはり腐葉土等の多い肥えた湿気の多い土がよい。鉢植えにする時は15センチ以上の鉢で3芽株くらい。芽の基部が土面より3センチほど低くなるように植えつける。地植えは特に灌水(かんすい)しなくてよいが、鉢植えは水切れをおこさせぬことに注意する。
挿し木は若い芽先を1〜2節の成葉をつけて切りとり、砂挿しする。活着したら平鉢に植えつける。7月終わりごろまでは挿し木ができ、その下の脇芽からの枝先にも開花する。最後の芽先の挿し穂は平鉢に数本まとめて植えつけると9月下旬から10月上旬の山草スタイルで見事に低く咲いてくれる。花型や花の色の良いものを挿し木で平鉢作りをするのは営利用にももう成功しているし、アマチュアにも容易な観賞法でぜひ試みていただきたい。
牧野博士の説をくつがえせるように信州人の手でマツモトセンノウを大いに楽しんでほしいものである。
(辰野朝日新聞・昭和58年1月22日掲載)
写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)
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