乾期の灌水──堆肥を薄くまいて

良く乾く。そのうちには雨が降るだろうと思って久しい。灌(かん)水をどこでも苦労してやっているが、小さなジョロで露の如く灌水していたのでは表面がちょっと湿っているのみで降水量に換算すると1、2ミリ以下。下が乾いているので根に水が届かないうちに乾いてしまう。こんな無駄な灌水を皆いつまで繰り返しているのだろう。これでは栽培法の上達なんてとても望めない。やるときはたっぷり、朝がよいか夕方がよいか談議しているのは死にかけの患者さんにヤブ医者が消化剤をのましているようなもの。しかし、水道やバケツでジャバジャバと流すと有機質の少ない畑や鉢の土はすっかり表面が細粒化して固くなってしまう。ポリマルチをすると昼間の下の土は60度以上になって表面の根や土を肥してくれるものすごい数の土壌微生物を殺してしまう。
日本人は清掃好きで落ち葉や雑草は皆ほかに捨ててしまうが、これが土を肥す重大な宝物。これや台所のゴミなど腐るものは何でも畑や鉢の土に交ぜてあれば乾く時にも土を固めず、肥料の効果を高める。急患に対する療法はバーク堆(たい)肥や切り藁を地表にうすくてもよいから散布してから多量の灌水をすること。
   (辰野日報・昭和58年6月11日掲載)

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