肥料の種類と効き方[2]──カリと尿素は適量に

植物の根からすぐに吸収される肥料成分は、窒素肥料中の尿素態の窒素と水溶性のリン酸とカリのみで、特に水溶性のリン酸はリン酸肥料の中にはほんのわずかしか含まれていない。カリはどの肥料に含まれているのも水に溶けやすく、急に多量に根毛の所に行くと根毛の細胞が原形質分離という現象でこわれてしまう。尿素が多過ぎる時も同様で、軟かい葉の鉢物等へ濃すぎる液肥を与えると根毛の細胞が1、2時間で光沢を失い、次には葉も花もしおれてくる。この時は気付いたらすぐに沢山の水をかけて鉢内の濃い肥料を洗い流した後は元気が回復するまでは少し日陰の風通しの弱い所へ移し、灌水をひかえると助かる。しおれるからと毎日水をやると根は根毛だけでなくて全部腐って枯れる。
油かすや鶏ふんは生でも腐ったのでも鉢物等の表面に多量に置き肥とすると速効性の肥料分が多すぎるだけでなく、それが腐る時の有機酸で下の根も肥料や腐葉土を吸えるように作りかえてくれる土壌微生物も皆殺してしまう。肥料はほどほどに極めてわずか施すだけで十分である。山の草木、特に高山の岩場でさえだれも肥料らしい肥料をやらないでもみんな育っている。次回に堆肥や腐葉土、油かす等を植物に吸えるようにしてくれる土壌微生物の事を知ってもらおう。
   (辰野日報・昭和58年8月13日掲載)

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