キウイ──栽培はやっかい

私の家にキウイの木がある。この果物が初めて輸入された年に姉が亡母の所へ2個送って来た果実の種子をまいたものである。当然ダメと植えた苗が8年余後開花したら雌の木。スケベ心をおこして出京の時1個買って来たのをまいて3年目に前の木に高接したら幸に雄で12年目に初めて結実した。この木は種々の人の結論で日本で最も古いキウイの雌木とされている。
当地でキウイの木は育ったことは確かであるが、春の晩霜でブドウのねむり病の様に冬芽が凍死し、発芽してからも寒害を受ける。問題は秋の収穫期で、結実しはじめて以来、10月中に収穫したものはだいたい後熟しても不味。11月3日以降まで強い霜にあたらず収穫したものが独特の甘い良い肉質と色の果物となる。採ってすぐ食べられない果物の一つで、完全に熟期になったものを収穫後20日以上5度以下の低温庫に入れて後熟させた後に、室温に移して1週間余経て軟らか味を感じる様になって初めて食べられるやっかい物。愛知県の新城市でさえ2割は凍害を受けるそうで、家庭用栽培でさえなかなかにやっかいな果物である。さて皆さん、高い雌と雄の苗を買って植えて、十年後に何人が完全に収穫し美味を味わえるでしょうか。長野県では果樹園としての経営は結局は危険ですよ。
   (辰野日報・昭和58年12月?日掲載)

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