大木を大切に[1]──市が私庭の木を管理する国も

ロンドンの北にハイゲートという古い住宅街がある。街路樹や庭木の太い枝で広い道を覆い、その下を大型作業車も走っている。そこに私設のシオンパークという大きな公園がある。向こうの人が豆粒ほどに見える広い芝生の歩道の所にニセアカシアの巨木があり、この木を生かすために10センチくらいの若木を逆に接いでこの木の枯れるのを防ぎ、成功している。ハンブルグでは私庭のものでも直径20センチ以上の木は勝手に切ったり動かすことが禁じられている。その代わり枝が折れたり、枯れそうなら市の公園局の人が完全に治療してくれる。市内の緑をもう長い間大切にしてきたため実に見事な町である。
それにくらべて日本の庭はどうだろう。金沢の兼六公園では庭木が弱ったり枝が欠けたりすると同じような木をさがして来て植えかえるだけ。盆栽を作る腕前をもっているのに植えたままの大きさでくりかえし何年経っても大きくならない。手入れをしているのに山の木のようには太くならない。太い幹に元気な枝葉をつけた庭木を作るには枝先の手入れだけでは駄目である。
   (辰野日報・昭和59年1月28日掲載)
  写真提供:Victorian Craft

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