大木を大切に[5]──20年が勝負のケヤキ

ケヤキは日本を代表する巨木になる闊葉樹の一つであり、各地に大木があり、大きくなるほど材の価格もよい。若木のうちに枝打ちをしないと太く長い幹は得られない。幼齢期の幹の直径が20センチ位までは幹が曲がっているのが普通で、放任すると直幹の部分は短かくて材の利用部分が少なく、上の枝は箒状となってしまう。各種の樹木で一番太い枝を力枝というが、この力枝が低い所から出ていると幹は短かくなってしまう。関東平野の屋敷の周囲の防風を兼ねた屋敷林のケヤキは昔は皆、力枝の下の枝を早めに切り落とし、上の枝もいくらか間引いてやると次第に力枝は上の方に出来てゆく。そして力枝の下の弱った枝を切り落としていくと直幹が8メートル以上に50年位で成長し、伐期に入る。生えて20年位がケヤキの経済価値を決める勝負の時代である。
この辺のケヤキを見ると手入れらしい手入れをしていないので、幹は短かく、中頃の枝がざわざわしていて、その幹も製材して見ると枯れ枝が材の中にあって廉い材になってしまう。誠にもったいない話である。ケヤキは雑地を生かす経済樹木であり、世界に誇る造園樹木であることをもっと認識しよう。
   (辰野日報・昭和59年3月3日掲載)

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