大木を大切に[7]──短命のソメイヨシノ

国華桜といいながら、日本人の桜についての知らなさにはあきれてしまう。その証拠には一番多く見られるソメイヨシノは短命でテングス病にかかっている。アメリカのポトマック河畔にたわわに咲くのもこの染井吉野桜である。どうしてこんなに違うのか。それは砧木である。ヤマザクラに接いだソメイヨシノは長生きして巨木になるが、日本では普通アオハダザクラを砧木としているので苗代は極めてやすいが短命砧木であるから、40年位で弱ってしまうし、少々大きくなってからは移植困難である。ソメイヨシノは天狗巣病にかかりやすいが、アオハダ砧の場合の方がかかりやすいという人もある。ほかの桜もアオハダザクラ砧をやめてヤマザクラ砧に切りかえるべきである。なお、天狗巣病は胞子が遠くまでとぶし、野生のヤマザクラもかかる。絶滅には伊那谷全体で一斉に箒状に細い枝が密生している病枝を切り落とし、焼き捨てる。数年間この切り取り焼却をくりかえせば、恐らく日本中で一番桜の美しく咲く地方となるだろう。
桜には高遠のコヒガンザクラのほかにたくさんの美しい品種がある。皆ヤマザクラ砧にすれば良く育つ。
   (辰野日報・昭和59年3月17日掲載)

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