大木を大切に[10]──八重桜の仕立て法

桜の品種は京都の佐藤翁の大著にあるとおり古来、近年多くの銘品が多い。しかし同好の士が年々新しく、美しい品種を発見したり、育成している。特に御殿場の渡辺氏はフジザクラの美しいのをたくさん発見して市販に移されている。小さくて挿し木でも増やせるので、盆栽にもなり、狭い庭に何種も植えつけられている。この種は巨大木にはならないが、つけ加えておく。手良にも記録されていない桜があるらしい。楽しみだ。
八重桜の仕立て法として北欧ではやりはじめたのに面白いのがある。真っ直に砧木を育て、1〜2メートルの高さの所に目的の桜を接ぎ、放射状に枝を周囲や上に棒状にのばしてある。この樹形だと側枝から出た長い枝さえせん定していけば容易にたわわな八重桜のお花見と造形の美を味わえる。
ケイオウザクラとその交配種は当地では一番早い桜である。帯状に育ち、下枝の下端から発根してくる。細い枝も太い枝も直接挿し木すれば発根し、繁殖して最も早く咲く桜ながら短命である。
桜の園は詩歌と漫然とした植えつけではいつまでたっても実現しない。
   (辰野日報・昭和59年4月7日掲載)

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