適時に適作業──ツバキの定植は月末

今年のように寒い冬から一足とびに初夏のようになってしまうと、園芸の仕事はまことに忙しい。毎年春になるとどこかで代かきをし、田植をすると家でも急がなくてはというのを“デモ百姓”という。しかし気温も地温も低い時に作物や花などを植えたり、まいたりしてもうまくは育たない。適時に適作業を行う事によって草木も愛がん動物もうまく育ってくれる。まいたり植えたりしたものが発芽や発根が遅れたり、時には生えなかったり、育たなかったりする。最近買ったツバキやサツキを植えかえるときに土付き苗をそのまま植えたのは今冬は最悪ですっかり枯れたのが方々にある。ポットで中の根が真っ白にかたまった苗をそのまま植えたのではその後の生育が悪いのもまた同じ事。特にツバキやキンモクセイ等は当地の露地へ定植するのは5月末以降が適当。なおキンモクセイやギンモクセイは当地では暖冬が続いたので何年か冬越しをしてきたが、根本的には当地では長年無事に育つ事はないからあきらめる事。その代わり暖地では育たぬ落葉性のかん木にモクレンの類など花や紅葉の美しいものがいろいろある。
草木を外で育てるには寒い所で育つものにしぼり、保加温施設に応じて熱帯性や暖地産の園芸植物の種類をきめよう。天然要素から育たぬものはやめ、天候に応じてすべて人のやる事にまどわされず作業しよう。
   (辰野日報・昭和59年5月12日掲載)

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