ハナショウブ[1]──大きく三系に分類

この辺でアヤメと言っているのは昔田んぼに刈り敷と言って灌(かん)木の若枝や土手の草等を刈って稲の基肥をやりましたが、そのころ草場に咲いていた青色3弁のアヤメが真正のアヤメです。7月ごろ、たくさん山や霧ヶ峰の湿地に咲く紫色の濃い3弁のがノハナショウブで、ハナショウブの野生種です。ノハナショウブの徳川時代に改良されたのがハナショウブです。5月の節句にヨモギと共に飾ったり、ショウブ湯に入れたのが本物のショウブで、これはセキショウの仲間でマムシグサ科、早春に目立たぬ穂状の花を開きます。正確に認識してください。
ハナショウブは普通は3弁で、6弁になっているのはその内側になる内花弁が外のと同様になって6弁に見えるのです。より以上に花弁や雄蕊(しべ)雌蕊が変化している八重咲は獅子咲といいます。ハナショウブは大きく江戸系、伊勢系、熊本系に分けます。熊本系は重厚な感じの6弁が多く、伊勢系は花弁が垂れ軟質で優雅ですが、強い雨には弱いです。江戸系にはあっさりしたものが多く、熊本系と共に現在の「花菖蒲」の主流です。
栽培は普通花が終わったら、花茎を根元から切った後その両わきの大きな葉芽を植えます。この辺は7月8日は高温で強光ですから水田状にしておいた所に植えるか、ポット植えは水に浸け、半分葉は切ります。
   (辰野日報・昭和59年7月1日掲載)

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