コスモス[1]──秋のシンボル

秋の花コスモス。昔は秋桜といわれ、中秋から晩秋まで主として桃色の花を群開させ、秋のシンボルとされた。しかし、現在は昔のコスモスの美しさはどこでも見られない。ごく一部の観光地でコスモスが満開して観光やPRの材料となっている。だが、よく見ると品種としての美しさは乏しく、雑種が混じって昔のコスモスの美しさはない。
アキザクラにふさわしいコスモスは、春生えても秋にならないと咲かない晩生種で、大きく育って一斉に開花した。だが、この本物の秋桜は全国的にも外国のカタログにもなく、もうなくなったようである。
今あるコスモスの秋に咲くのは早咲きコスモスのくずれた遅咲きの系統で、春播いたのがボウボウと育って、夏になるとウドン粉病がついてから貧弱な花が、株ごとにずれて咲き、全く美しくない。昭和10年ごろから早咲きコスモスができ、さらに戦中に米国でできた大輪早生種で、桃色で花弁の基部の赤いラディアンスが登場してくる。それに伴って早咲き大輪の早生種が色別に取り扱われるようになった。
早咲き系は早く咲くものほど小さく短期間しか咲かず木も大きくならない。初めのコスモスの早咲き系は1番花は10センチ以上の大輪が咲き見事であった。前記のラディアンスは最大14センチ花をつくったこともある。しかし、こうしたコスモスも採種法が悪いと年を追って遅咲きとなり、花も貧弱となり、名にふさわしくないアキザクラになってしまった。
   (辰野日報・昭和59年9月23日掲載)

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