コスモス[2]──遅咲き小輪に

私は採種事業の関係で、戦前のアーリー、グランディフロラ、次のセンセイション、戦後のラディアンス、その後は昭和30年頃の初期のベルサイユまでの品種をほとんど扱って、多量の色別品種の種子を供給してきたが、東京オリンピックの花壇用を最後にコスモスとの交際をやめた。その頃早咲き系の色別品種を早播きから8月上旬までの播種期をかえて、5月から12月までコスモスの咲きつづけるよう宮崎交通のコスモス園に残った原種子を提供してしまった。品種管理を注意したが、最近の写真を見ると開花期や色の混合率と共に遅咲きや小輪が目立ってきた。
花弁の先が濃色で、基部の白い覆輪花は、昔フランスにあった晩生種から戦前戦後を通じて、大変な精力と面積を使ったが良いものはついに得られず、その一部から坂田種苗社からアカツキが得られたが、遺伝子と生育力の弱さから保存だけで苦労しているようだ。昔の八重咲きも15センチのものを作ったが、戦後に経済生産が続かず、失ってしまった。
今コスモスを秋に満開に咲かせるには、信用のおける種苗商から色別(混合でない)の種子を買って、6月下旬から7月中旬に播くしか方法がない。良い早咲き大輪種の種子は、あるいはもう世界中にないのではないか。その辺のコスモスの種子を採っても来年のよりよい花は期待しない方がよい。
   (辰野日報・昭和59年9月29日掲載)

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