何のコスモスといっても良いコスモスはなかなかない。いま、方々で見られるコスモスは下葉がウドンコ病等で枯れあがり、小さな細い花弁が、先が離れて咲いている。
昔のアキザクラとして親しまれたコスモスは、花茎7センチほどで広い花弁がふっくらと咲いて下葉も青々としていた。それが早咲き種の戦後の普及でなくなり、北海道から鹿児島までさがしてもらったがない。外国でも遅咲きの在来種は売っていない。早生種が普及したが、より早咲きが要求されるにつれて早咲きの10センチほどのものが次第に小輪になり、木も弱くなり結実も悪くなった。また、遺伝的に先祖返りの遅咲きがでてくる。これは草性は物すごく強く、草ばかりでかくなって時には秋おそくでないと咲かず、結実がよい。これがまたウドンコ病に弱いので、秋を楽しみにする前に邪魔物扱いをされて、刈りとられ、その残りが、いま方々で咲いている。
今、昔のようなふくよかなコスモスの種子はなかなか入手できない。黒姫のほか、ニュースの種になるコスモス園は年々中途半端な美しさとなっていく。
現在は、昔のコスモスの面影のある品種は切り花用に使われる改良ベルサイユとラディアンスのみではなかろうか。ラディアンスも桃色で底紅の10センチ以上の大輪であったが最近の良い種子でも、8センチ位である。なお、赤いコスモスはキバナコスモスの赤花で、普通のコスモスの別種である。
(辰野日報・昭和59年10月7日掲載)
|