コスモス[4]──赤は坂田が世界一

コスモスの花色は桃色、白と赤と言っても桃の濃い紅紫色に、花弁は桃色であるが基部が紅紫色のラディアンスの4色である。赤いコスモスもあったが褐色を帯びた赤で美しくなく、私も10年近く苦労したが鮮やかな赤にならず、現在は世界中になくなった様である。
黄花コスモスという別種のコスモスがある。5〜6弁の原始的の木ばかり大きくなるが改良はストップしていた。戦中になって半八重で1メートルぐらいで咲きはじめる濃い黄色を作り出したのが幸に、種子の貯蔵箱内で生きのび、戦後数年してひょっと多量に採種できたのが、いま国内に普通にある黄花コスモスである。
戦後アメリカで作られた乳黄色の小型の黄花コスモスでフィエスタという新品種に時々本当に赤い筋がはいる。岩手の橋本君が赤花コスモスを育成したという。これが国際的に登録されたがフィエスタの赤い筋が全体の色となった赤花で、親どおり初めに草体を大きく作っておかぬと花首が次第に短かくなって貧弱になるのが欠点。赤いコスモスを作ることに意地になって張りあった坂田種苗KKでは私の半八重濃黄色から鮮やかな濃い橙紅色のコスモスを数年おくれて育成したが赤花コスモスの名は国際的に登録されているのでもう使えない。しかし赤いコスモスとしては坂田のが世界のピカ一である。園芸屋はこんな所で広い面積と労力年数をかけて新品種育成にしのぎをけずっているのである。
   (辰野日報・昭和59年10月14日掲載)

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