イチイ[1]──雌と雄は異株

当地方でミネゾと言って庭木や垣根によく植えられている木の和名の正名はイチイである。ミネゾはミネズオウと間違えられやすい。ミネズオウはツツジ科の高山植物でコメツガの葉に似ており極めて低い小灌木で薄桃色の小さい花が咲く。ミネゾの名は他の地方では通用しない。
イチイは雌雄異株で雌の株は今赤い実をつけている。庭木で赤い実をつけていない木は全部雄木かというと、実のならない木に随分と雌の木がある。全く実のならない雌の木はない。実のならないのは翌年の蕾のできる晩夏から初秋に枝を強く刈り込んで蕾のできるのをさまたげるからである。
もう一つは3年から5年に一度木が赤くなるほど実をつけて枝が枝垂れるようになるが、その次の結実年度の間はわずかしか結実しないのが普通である。おそらく実のなる雌木をご先祖様が植えたと思うが毎年夏に手入れよく庭師が刈り込んでいると花芽をつくる事が出来ずに実を観賞することはできない。夏は強くのびた枝だけを切り落とし9月下旬以後に刈り込みをすれば毎年ある程度は結実するものである。そうすれば庭木のイチイは年々幹は太くもなる。
雄木と雌木の区別は結実年齢にならねば正確にはわからない。自然に生長させると雄木の方が高くなり枝は心持ち上向きの傾向があり、雌木はそれほどのびず枝は横に開く。
   (辰野日報・昭和59年10月?日掲載)

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