イチイ[2]──雄木の蕾は球状

イチイの雌雄鑑別は秋末以後の小さい花芽を見れば確実にわかる。2月になると雄木の蕾は球状にふくらんできて、暖い春は2月下旬には開花する。淡黄色で3ミリ位の球状で2〜3日の間の高温の時に多量の花粉を出した後は淡褐色となり、数日中に落ちる。
雌花はこの時期に短期間開き、授精するが私はまだその時を観察できないでいる。花粉は何キロも遠くまで舞い散ってその地方の雌木に授精させるのであるが、この花粉がクセモノで花粉アレルギーの春の第1号で、弱い鼻粘膜の方は悲しい春の鼻水の時期となる。この花粉、南部の木曽、伊那谷から始まり、西駒等の高山の野生のイチイの開花が終わるまで続き後は杉から松の花粉にバトンタッチされて花粉症は続く。
イチイの実の色は普通は赤いが、橙色から黄みを帯びたものも希にあり北海道大雪山の黄色果の苗を北大植物園からいただいたがこれをキミノオンコという。なお、北海道ではイチイのことをオンコと言う。日本海側特に鳥取の大山には灌木状で小枝や葉が密生する系統があり、キャラボクといって全国で庭木に珍重する。香木のキャラの真物はキャラボクの木片ではない。
果実の赤い所は仮種皮といい、中央に黒い種子が鎮座する。小宅に仮種皮が短かく、種子が半分裸出する木があり、ソンブレロと名付け、繁殖中。
   (辰野日報・昭和59年10月27日掲載)

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