昔、学校の春の遠足は白毛をかぶったオキナグサ(チゴンバナ)、秋の遠足はマツムシソウの空色を楽しんだものである。ところが今は昔の様な山の草原やガレ場は木で覆われたり、住宅や耕地になってしまった。なぜ彼女たちは自然界から姿を消したのだろうか。
オキナグサは雌しべの花柱に白い毛が生えていて熟した種子は風に舞って行き地面に落ちて生える。マツムシソウは軽い竹かごの中に種子がつるさがっている。両方共にこの種子が地面に落ちないと生えないし、生えても日が良くあたらないと育たない。至る所草刈りもしないし、林になって種子が地表の落葉や草の間にからんでしまい生えることができない。生えても日照不足で育たない。
自然では駄目でも、日当たりの良い庭先や鉢ならわりと簡単に栽培できる。華やかな洋花と違った美しさを楽しむのはいかが?
オキナグサの花はまず雄しべが先に成熟する。2番目に咲いた花の花粉を指先や毛筆につけて前の花の中心の淡い緑色の毛束になっている雌しべの先にそっとつけてやる。むろん違う株の花粉の方がよいけれど。交配が成功すると雌しべの花柱は白さが増し熟すると白い毛玉になる。放っておくと風で舞っていってしまう。
ちょっとつまんで毛玉がくずれるころに摘みとってもむと、毛の根元に1個ずつの種子がついている。この種子は赤土などですぐに播きつけると初秋には生えてくる。
(辰野日報・昭和60年2月15日掲載)
写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)
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