マツムシソウ──日向好きの花

つづいて秋の花マツムシソウも霧ヶ峰の高原の秋を覆う美しい姿は失われた。高速道の切り取り斜面に辛うじて咲いているくらいのもの。マツムシソウも日向好きである。種子は5〜6ミリの篭の様な皮の中に宙吊りになっていて風に飛ばされる。枯れ草にひっかかっていると春になって発芽しても根が地面に届かず枯れ、生えても夏になって雑草や樹木に覆われると日照不足で腐ってしまう。
日本のマツムシソウは自然では3年目でなければ咲かない事もある。早春にまいて十分に肥培すれば濃い若葉が地表にひらびついて大きくなり翌年は咲く。日照十分で幼苗期以後乾燥気味がよい。
1年で咲くトルコや中央アジア原産のセイヨウマツムシソウ(スカビオサ・コーカシカ)の園芸品種はまいた年に咲くものもあり花の色も白や赤紫など色々の色で大変に美しい。近ごろこの種子を求めてまいたことはないが若いころ4月初めに畑に直播し、夏には大分咲いて秋には採種できた。2〜3月はポット播きをハウス内などでして、5月ころに畑に定植すれば儲かる位の採種ができるだろう。
マツムシソウは播く時に土が細か過ぎたり、覆土が多過ぎたり、多湿の場合は発芽が悪いのでいくらか種子が見える程度にわずかに覆土するのが鍵のようである。
   (辰野日報・昭和60年3月16日掲載)

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