アオキ[1]──実の美しさ格別

ヒノキなどの常緑針葉樹をアオキということがあるが、アオキは当地の日陰でも育つ広葉樹である。日本では一般には冬の仏花などに使うので敬遠されることもある。しかし、斑入種や変化葉の園芸種が特殊の園芸家に古来愛培されてきた。ヨーロッパへはシーボルトが紹介し、欧州の低温の所で美しい広い葉が戸外越冬するために愛好され、各地で見事な取り扱いを受けている。
この近所でもアオキを植えている家は多い。広葉の斑入種が多く見られる。雌木は暖地では秋の末に長だ円形の実が赤く色づくが、当地では春になってから色づくことが多い。この実の美しさは広いつややかな葉とともに格別である。
ところで、アオキは方々の家にあるのに余り実をつけている木が見られない。なぜだろうか。花はいつ咲くのかというと、暖かい年や日当たりのよい所では3月末で、4月中旬まで咲く。調べてみると大部分は雌の木である。美しい実にひかれて株分けや挿し木で増やしてもらってくるので方々の家にあるのは雌木が多い。
雄木と雌木の区別は正確には開花期につくだけ。雌木がいくら花を咲かせても近い所に雄木がなければ受精出来ない。空気の湿度や風向で自然の交配率も変わってくる。相性が悪く、隣合わせの雄雌の株でも結実しないこともあり、どうも雌木に対し全く授精力を欠く雄木もある。
   (辰野日報・昭和60年4月14日掲載)

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