アオキ[２]──結実する雌雄同株

昨年春に新宿御苑をゆっくり見たが、植えた木も自然に生えた木もいっぱいあるのに結実している雌木はほんのわずか。自然に生えた株には圧倒的に雄が多く、こんなに雄株の多い例は初めてである。私の所に友人の持って来てくれた雄の斑入葉の株がある。この雄株は現在集めてあるアオキのほとんど全部を授精させ結実させる。
わが家で子供の時から古木であってまれに結実する株の隣りに強性の雄の小苗を植えたら数芽咲いただけで大株に真っ赤になるほど結実した。以後、翌年は結実出来ぬほど多量の結実が引き続いている。
この強力雄株は５メートル以内の雌株を結実させる能力があるようである。いろいろの雌株の方も株によって授精力には差があるらしく、咲いた雌花全部が結実するとは限らない。大きい葉であるから大きい実がたくさんなるとは限らない。雌花房は短く４弁の中央に緑色の柱頭があり、雄花房は大きく多花で雄しべが４つあり早く枯れ落ちる。
昔、私の恩師が発見した雌雄同株で１本でも良く結実する株があったが、もう長年全国の友人に依頼しているがこのような株はまだ誰も見つけてくれない。また、今でも残念に思うが、英国の世界的に名実共に有名な王立のキユーガーデンという大植物園にホソバアオキが一株だけで見事に結実していたが、これは雌雄同株と思われる。急ぐ旅で一枝を請うことが出来なかった。
　　　(辰野日報・昭和６０年４月１９日掲載)