アオキ[3]──挿し木は梅雨期に

アオキは園芸植物ことに斑入り(ふいり)葉の種類は徳川中期以後の版画園芸文献にも載っていて植木屋、好事家の珍重する植物であった。今はその3分の1くらいしか現存しない。
大葉小葉、広葉細葉に加えて斑の変異がたくさんあり、株が2メートルほどに高く伸びる種類と、北陸の豪雪地帯に多いユキアオキを起源とするらしい小葉と多枝の低くしか伸びない種類とがある。大葉系の斑の美しいものは熱帯観葉植物の和名変葉木クロトン位の美しさを持ったものがある。斑の種類は刷毛斑や散り斑が多いが、星斑とか覆輪あるいは中斑と各種の斑入種があり、品種を集めるとなかなか壮観な庭園植物である。
実をも見るためには雌株を授精させる雄株が必要で、それを5メートル以内に植え付けることが大切である。中京地域で最近小葉の星斑の美しいアオキが多量に生産されはじめたが、これは雄木で斑が多すぎて冬に葉枯れを起こしやすい。アメリカから輸入された黄中斑のパラマウントは美しいけれど当地では戸外越冬は困難である。
繁殖は挿し木で、早春および梅雨期に最も挿し木の容易な植物である。また太い所に、あるいはたくさん結実した枝に8月環状剥皮を行い発根させると簡単に鉢植え用の大苗が出来る。斑入種は日陰すぎると斑の量は少なくなり、日照が強すぎると真夏や真冬に焼け枯れる。もっと東洋特産で耐寒性の常緑樹アオキを大切にしよう。
   (辰野日報・昭和60年4月26日掲載)

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