枝垂栗[1]──枝垂れる木

枝垂栗が辰野町の町木になった。枝垂栗の天然の林が世界的にどれほど貴重であり、どれほど大切にし、保護開発されねばならぬものであるか、ということをしっかり認識してもらうためにまず枝垂れる木のことから書こう。
枝垂柳は東洋でも西洋でも枝垂れ樹木として一般的であり、欧米にはたくさんの大木がある。街路樹としても方々で使われているが整枝は一番むずかしい木である。枝垂桜、枝垂桃は国内で一番目につく。枝垂松、枝垂桂、枝垂桑等のほか枝垂れのカラタチまである。
中国ではエンジュの枝垂れは特に貴ばれ、庭木や街路樹として中国の報道写真に気をつけていれば行かなくても気付くことができる。ヨーロッパでその他の木で多く見られるのは枝垂白樺と枝垂ブナで、ロンドンのハイドパークには大葉ニレの枝垂れの大木、枝垂サンザシもあった。針葉樹ではパリの大造園業者の庭の枝垂レバノンシーダーと枝垂カラマツの巨木が有名でその繁殖したものが方々の大庭園に見られる。
枝垂れ性の樹木の数はこのほかに何十種類もある。カエデの園芸品種の中にも枝垂れ性の銘品種が多い。多くは接ぎ木とか挿し木で増植して観賞されている。その実をまいても必ずしも枝垂れが生えてくるとは限らない。むろん、野生で枝垂れが林になっているのは辰野だけである。
   (辰野日報・昭和60年5月3日掲載)

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