枝垂栗は戦前に集めた文献からは秋田、山形、新潟、富山、石川、岐阜、栃木、群馬にあることが知られている。妙高山ふもとの赤倉温泉への途中に見事な数本があって亡父に教えられたが、今は無いのではなかろうか。県内には方々に記録があって辰野町に近づくほど多くあった。
クリタマバチという害虫で栽培の栗も野生の栗もほとんどがなくなり、抵抗性のあるクリノキが残っている。小布施栗はこの抵抗性品種であり、川岸小学校の上から採取してきたわが家のシダレクリも小野の林もどうもクリタマバチに抵抗性を持っているらしい。中信地区にはいっぱいあったシダレクリも造林で伐られ、クリタマバチにやられ、この50年間で目立つような大木は失われてしまったようである。
園芸とか自然現象のうち、枝垂れ性というものからすれば単に辰野町だけでなく、日本でも世界中でもまれな枝垂栗の天然林として保護、拡大し自然に親しむ場としてさらに開発、観光資源として、また土産物(後述)として保護費を捻出する材料とすることが望ましい。
観光保護のためには観光バス数台は入れるくらいの駐車場も欲しいし、周囲により広く植えつけることも要する。ただ気をつけねばならないことは、周囲の林を余り急速に伐採しないことも強く要望しておく。
(辰野日報・昭和60年5月10日掲載)
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