枝垂栗[4]──繁殖(1)

枝垂れ性の強い株は小宅の株のように、50年も苦労して高い木に仕立てようとしても幹の所で枯れこみが出て、まだ貧弱な木にとどまっている。しかしこの木の実生からは枝垂れ個体が必ず出てくる。結実しても下に落ちた実はノネズミやリスなどが夕刻までにはほとんど運び去ってしまう。タヌキやムジナなども多量に巣穴の中に運び込む。したがってシダレクリの種子は毎朝採取を要する。ただ小野の枝垂栗の林は天然記念物に指定されているので監督官庁の許可を得なければならない。
フランスの秋を訪れるとマロニエの種子を拾ってくる方が多い。しかしまいてもほとんど生えない。日本のトチノキも枝垂栗も含めて山の実には実が乾くとすぐ生えなくなるものが多い。ブナの実も乾くとすぐ生えなくなる。このような種子というか果実はすぐポリ袋に入れ、乾いていたらちょっと水をかけて、帰宅したら湿った砂やバーミキュライトに埋めて冷所に貯蔵する。
私は拾ったらすぐ鉢に鹿沼土や赤土に埋めてまきつける。まきつけは遅くても12月中旬まで。多量の場合は魚冷凍用の発泡スチロール容器の深さ10センチくらいのがよい。発芽は年末から2月にかけてまず根が伸びてくる。地上に芽が出てくるのは3月下旬からで、葉の出てくるのは4月中旬以後である。浅箱にまくのは直根が強く伸びて移植の際に傷みやすいのを防ぐためである。
   (辰野日報・昭和60年5月24日掲載)

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