アジサイ[1]──挿し木の好機

紫陽花と書く。梅雨期の花で原種はガクアジサイといい、伊豆半島や江の島あたりに野生がある。原種は花房の縁だけに4弁で雌雄芯(しん)のない花がつき、その中側に細かい雌雄芯のついた花が平らに並んで咲く。
この周縁の4弁花だけになったアジサイがどこでどうして出来たのか、作られたのかはわからない。シーボルトによってオランダに持って行かれた時、欧州の園芸人は驚いた。現在、白や桃色や色々の色で、花も大きいのはヨーロッパで改良されたいわゆる西洋アジサイで日本の普通種より良く花をつけるが耐寒性は弱く、当地では植え付ける場所と防寒法を工夫しないと咲かないことがある。
元気のよい枝の頂芽と茎の上方の腋芽(えきが)に8、9月に翌年のつぼみが形成される。今年咲いた花の下2節はだいたい花芽を形成する。9月に入って大きく先の丸くなった芽には真ん中につぼみの元となる花の組織ができる。そうした芽を花芽という。
この梅雨期は挿し木の好機で、花の下の側芽のあるところを2節か、咲いていない枝の先のごく若い所を摘み取って、その下2、3節を挿し穂とする。鹿沼土に挿して暖かい所で多湿になるように軽くポリ袋でもかけておけば発根しやすい。葉は半分に切る。根が1センチ以上のびたら肥えた培養土に植えかえ、秋になったら霜に出来るだけあてぬようにすると西洋アジサイなら明年良く咲いてくれる。
   (辰野日報・昭和60年7月5日掲載)

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