ギボウシ[1]──土の流出を防ぐ

ギボウシ、ギボシ、コレ、コウレッパといろいろに呼ばれている。昔の霧ヶ峰でワラビの時期が過ぎると、諏訪市へはコレと称して葉柄を山菜として売りにきた。オオバギボウシの葉柄で、コバノギボウシの葉柄は細くかたいので当地では食用にされなかった。暖地の湿潤な岩壁に多いイワギボウシの仲間はタキナの名で広く食用にされてきた。
庭園植物としてはトクダマとかトウギボウシなどの広葉でロウ質の表面の仲間が日本庭園に植えられ、また諸派の華道で手掛けねばならぬ材料である。江戸時代の園芸書には色々の斑入種を含めてたくさんの種類が版画と共に記されている。中国では楊貴妃が特に愛好されたという夏の夜開性で白くギボウシ中最大輪のマルバタマノカンザシがあり、昨年は北京を訪れた友人がホテルの庭に咲く写真をとってくれた。タマノカンザシは丸葉種よりやや早く咲き花梗も長くちょっと小輪。この両種は特に芳香が強い。
ギボウシは中国、韓国、日本の特産で40種ほどあるが、変異は非常に多く外国では愛好の会がたくさんある。日本では小生を含め古くから集めている人が次第に増え、現在は著名の人が10人余となった。ギボウシには前述の用途の他に、岩場や土木工事の切土盛土の所でも育ち崩壊と土の流出を防ぐ大変な特性がある。蛍の養殖地の辺に先年その目的で植えたのが現在見事にその効果をあらわしている。
   (辰野日報・昭和60年7月19日掲載)
  写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)

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