ギボウシ[3]──株分けは早春に

乾き過ぎとか湿りすぎあるいは強光線とか全く日の当たらない所などの悪い条件では育たない植物が多い。それぞれこれらのどれかをどの植物も好む。ギボウシの仲間はその悪い条件のどれにも耐える性質を持っている。もちろん日陰の水のしたたる岩壁に野生している種類は強光や乾燥には弱いが全く育たないということはない。
伊豆大島や新島の乾く岩上には夏は朝露くらいで育っているハチジョウギボウシがある。どの種類も根は非常に広く深く張り、ことに岩壁に生えている種類は岩の隙間へ他の植物より深くもぐって行き岩面にも根が張りついて生育し、岩壁の崩壊を防ぐ大変なすごい力を持っている。大型の種類は1年で1メートル余も根を伸ばし、古株になると地際にはスコップも入らず、ツルハシさえ打ちこめない。ということはギボウシは崩れやすい斜傾地や岩壁の崩壊、土壌の流亡を防ぐ大変な緑化植物であることを示す。
移植や株分けには大変丈夫であるが、種子では親と同じものは園芸種ではほとんど出来ないし、結実しないものもある。株分けはいつでもできるが当地では早春の芽の伸びかける時がよい。おくれるとその年葉茎は小さくなる。夏の分株は根の土離れはよいが、その年の葉は美しくなくなってしまう。大型種は根がものすごく張っているので簡単には掘り取りや分株は困難で、特に大切な種類以外は思いきって地際から根を切って掘りあげ半乾きにしてから分株する。
   (辰野日報・昭和60年8月2日掲載)
  写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)

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