ギボウシ[5]──多種類が販売

小さい株は根があまり傷まないが、悪いのは長期間小さいポリポットで栽培された苗で、傾斜地に植えつけると長い雨で土砂と共に押し流されてしまう。大型種は根を切れば切るほど第一年度の生育は悪くなるが、無駄な古根があるよりは根の活着はよい。草丈1メートルほどになる大型種は根は10センチくらいに断根して大丈夫。ただし固有の大きさになるのは春の株分け移植の場合3年目となる。しかし園芸品の銘品寒河江は1メートルほどの根を1本も切りたくないし、ポリ小鉢で栽培していたのではそのよさが全く発揮できない。前年肥培した株を早春に小根を1本も切らぬように1メートルほど離れた所から掘りすすみ、株分けの時は切り分けた直後に硫黄華をまぶして、その切り口は10日ほど空中にさらし、根を乾かさぬように保存してから植え付けあるいは販売し、はじめてマニアを満足させることができる。しかし一般的にはこんな丈夫な宿根草はない。欧米の植物園庭園の名ある所にはいろいろのギボウシが配植されているが、おひざ元の日本ではあまり知られない、あるいは使われていないのは悲しいことである。
近年種苗商でいくつかの種類が販売されるようになり、専門の種苗商も出来かけている。私も普及と利用への第一発言者でもあり、多数のものを集めてあるが、一般への供給の時間と労力がなく残念。前述のとおり大きく作った方がよい種類の肥大した大苗あるいは小さく作った方が美しい種類の小さな苗を供給するように関係者に強く要望している次第である。
   (辰野日報・昭和60年8月17日掲載)
  写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)

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