もみじの季節になった。もみじという言葉には2つの意味がある。植物学的にもみじという植物はない。植物学的の名前はカエデの仲間をさす。漢字では樹と書く。一般的に使われている楓はカエデではなくフウであって、漢詩に出てくる楓橋夜半……寒山寺の楓橋鎮は、1939年に通過した時には石橋のかたわらに和名タイワンフウの古木が数本あった。カエデと異るのは掌状葉ではあるが対生葉でなくマンサク科である。カエデの種類は日本には野生種がたくさんあり、世界的にも多い樹木で園芸種もたくさんある。
秋に葉が紅や黄に変わるのをもみじするという。紅葉とか黄葉とか書き、古来からの紅色の布の紅絹地(もみじ)の名をとったとか紅や黄の色がもみ出すように着くから等々というが、秋になって落葉前に木々の葉が緑から紅や黄に変色する現象をいう。常緑樹のクスやカシの類も春に新芽を吹くと同時に紅葉、黄葉するがどうもこれをもみじ見物という話は聞かない。
一般的にモミジとはいろいろの樹木が秋の落葉期に葉が変色した美しさをいうので、落葉直前のカラマツの黄葉もモミジである次第。落葉前に美しい紅葉を見せる木はカエデ、サクラ、ナナカマド、ウルシ、ヌルデ、ナラの類、カツラ、ケヤキ等やかん木に大変に種類が多い。紅葉する木と黄葉する木があるが、その年の気候条件とその木の栄養によって色は大変に差があり定まった色はない。
(辰野日報・昭和60年10月5日掲載)
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