紅葉[2]──天候と栄養で大差

紅葉あるいは黄葉はその木全体の葉が変色する状態をいうので、夏期に一部の弱った葉が美しく紅葉することがあるが、これはワクラバ病葉に属する。なぜ紅くなったり黄色になったりするのかは植物生理学のむずかしい問題で、私にはそうしたことはわからない。天候と栄養でその年の紅葉には大差が出ることはご承知のとおり。早くどっと霜の来る年は紅葉は美しくない。日照の長い日が続きゆっくり低温になる年ほど紅葉は美しい。しかしその時にキリリとした低温の夜がないと美しい紅にならず、黄葉となってしまうことがある。寒地高山の方が紅葉が美しいのはそのためである。ケヤキの若木だとか肥料をたっぷりやるリンゴ等は他の木が紅黄してもドス黒い紅葉となり落葉はおくれる。
自然の紅葉は人為的には変えることはできないが、公園や庭園と盆栽等では多少美しさを左右できる。秋末には肥料の中の窒素が少な気味になるように、また土地が乾燥気味になるように肥料や土を加減、造成工夫することで紅葉を楽しむことが出来る。ハゼノキの実生叢生の盆栽が好まれるのはその調節が一番簡単であるからで、全部の葉の紅葉を楽しむためには霜にあてぬように紅葉がはじまったら屋内にとりこむことが必要。小さい灌木なら霜除の覆をすれば数日は紅葉を楽しめる。カキやウメ等の果樹の葉が美しく紅黄するようだったらこれは栄養失調、枯死近いので大急ぎで追肥する。
   (辰野日報・昭和60年10月12日掲載)

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