カエデ[1]──24種が野生

カエデは日本には沖縄を含めて24種が野生している。外国種はトウカエデ、ネグンドカエデ、サトウカエデとその園芸品種がある。日本の野生種にも色々の変種があり、園芸品種は元禄時代に急に増え、明治期に200余、最近また増えて、日本のみならず世界中の野生種とその園芸品種はものすごい類である。その何れもが秋になると紅あるいは黄に紅葉する。春の成葉が緑の葉色のものの方が紅葉は良い。若葉が濃い紅で初夏になっても紫っぽい紅色の品種は大体秋の紅葉は美しくない。冬の一年生の枝が鮮やかな紅とか緑色の木も良い紅葉をする。前回に書いたようにその年の気候や栄養で紅葉は紅になったり黄色になったり、肥えた木はドス黒い赤になったりで、一定ではない。イタヤカエデやウリハダカエデは普通黄葉になるものであるが、年によって場所によって目のさめるように紅葉することがある。カエデ類の紅葉の美しさは古歌にもあらわれていて、各地に名所が出来ている。庭木としてあるいは盆栽として楽しむためには大変に面白い木である。落葉した寒樹良し、芽吹よし、夏よし、秋よしでこんなに楽しめる樹種は少ない。繁殖も実生、接木と挿木で容易に出来る。接木は一般に早春水をあげない1〜2月にしたり、取り木的に寄せ接ぎも出来る。挿木は寒中の枝と6月以降の新梢で緑枝挿が出来る種類があり、夏期に太枝の環状剥皮による発根も可能。近年の挿接の技術向上で美しい園芸種が入手しやすくなったのはありがたい。
   (辰野日報・昭和60年10月19日掲載)

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