カエデ[3]──繊細微妙の美

園芸上面白いカエデの種類はたくさんあるが、園芸品種となったものは親が何であるかわからないし、代表的なイロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジの3種類については植物学的には同一種内の変種であって、野生では中間のものがたくさんあるし、園芸品種もおよそこの3つに区別されている。遺伝学的には余り意味はないと思う。まあ小葉系をイロハ、大葉で裂片の広いものがオオモミジで中間がヤマくらいに考えていればよい。5裂片のをイロハニホの5裂片であるからイロハモミジというが、山でも老木は5裂片になるし、園芸品種の細く細深裂したものには7片になり、ヤマ系の大葉で細深裂した手向山という品種は11裂にもなり、別種のハウチワカエデの細深裂した舞孔雀は11〜13深裂するので、葉の裂片だけで種類品種を厳密に分けることはできない。近ごろ多く出まわっている清姫という小葉は5裂で葉に光沢があり紅葉もよく、冬の若枝は赤く庭木としても小物盆栽にしても美しい。芽吹きの鮮紅色で出て葉がのび切ると鮮緑色になるものが紅葉が美しく、夏も葉が紫味を帯びた手向山は老年になると枝垂れ性を帯び夏の庭木の他の緑葉に対して美しいが、秋の紅葉は暗赤色になってしまう。若葉から夏場まで葉の縁が紅をさして美しい品種もあるし、色々の形の斑入葉が季節によって紅をさしたり黄斑であったり繊細微妙の美を織りなす所を見ればカエデの盆栽を沢山ならべたくなるのが人情。
   (辰野日報・昭和60年11月2日掲載)

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