カエデ[4]──美と変化は無限

イロハやヤマモミジの仲間の園芸種はその美しさと数の変化、バラエティーは今後も無限に増えていくだろう。太い木を作りたい時は露地植えにして多肥で強剪定(せんてい)して行けば容易に太い小型の庭木盆栽ができるが度を過ごすと上の枝ばかり太くなって、大きい枝の切り傷だらけになりやすいし、強くのびた枝を夏季等に強剪定しているといつまでたっても安定した自然らしい枝ぶりも出来ないし、紅葉も良くない。ある程度大きくなったら余り肥料を多くせず、促効性の芽出し肥くらいにして年数をかけて素直な樹形を作ることに心がけるべきである。特に盆栽作りの場合は根張りと太い幹の大切傷の有無で風格が異なるので、その点を注意したい。若いうちは大きめの鉢で、古木は小さめの鉢で取扱うが、水分を多く要求するので夏に水を切らさぬこと。紅葉を楽しむためには肥料が多すぎると紅がさえず、不足すぎると黄葉で早く落葉してしまう。その駆け引きがカエデ園芸のだいご味という所。
変わったカエデ庭木盆栽としては大葉系ではハウチワカエデ、コハウチワカエデとその園芸品種。盆栽にはトウカエデで黄葉が主体だが寒姿根張り等老木作りが容易である。ハナノキ特に小葉性のハナノキは紅葉も冬の枝も美しいがまだハナノキの名の由来の春の花、秋の実の美しさに育っていないのは残念。ミツデカエデは樹形作りは容易。繊細な葉の赤い葉柄の美がありこの2種は挿し木、環状剥皮による太い盆栽が早くできる。
   (辰野日報・昭和60年11月8日掲載)

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