カエデ[5]──台木は実生で

カエデの類の繁殖は実生と接ぎ木、挿し木で行う。小物盆栽を作る時や接ぎ木用の台木を作る時には実生をする。
カエデ類の種子は秋に熟して飛散するので舞い落ちぬように採ってすぐに播くのがよい。乾き過ぎると生えなくなる。小鉢に保湿性のある土で播いておくがよい。小物実生寄せ植えを作る時は生えた直後から1〜2年の間に植えかえる。鉢植えの場合は将来の根張りを良くするため出来るだけ浅い鉢等に植える。種子をまいても野生以外は親とそっくりのものは生えてこない。
実生以外の繁殖法としては接ぎ木と挿し木に環状剥皮法がある。接ぎ木は昔は抱き接ぎが主であったが、現在は接ぎ穂、挿し穂共に1月の寒中に切って低温で乾かぬように貯蔵しておき、早春にあらかじめ掘っておいた台木に切り接ぎをして揚げ床に植えつけ、接ぎ口から水の入らぬようにビニール等で覆い、密閉しておく。挿し木で発根するものも同様。また6〜7月にその年にのびた新梢を2〜3節に切って挿し木出来るものもあるが種類品種によって難易がある。密閉挿しで空中湿度を高くするがよい。新梢の夏接ぎもある。
環状剥皮は6〜7月に2、3年以上の所の樹皮幅1センチくらい完全に剥ぎ、発根剤をまぶして、僅か湿った水苔を巻き、ビニールで覆っておく。枝振りの良い枝でやると1年で太い盆栽用の苗ができる。
   (辰野日報・昭和60年11月15日掲載)

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