正月の花[1]――湿度と温度管理

新年おめでとう。年の始めの松飾りは昔はそれぞれの家の習慣で、大変に特色があった。辰野駅前の箕輪屋とか大きな料亭は太い青竹3本を中心とした豪華なもので、珍しかったが一般的には誠に素朴であった。家内の生け花もキクを根じめにするのは大変にぜいたくであった。
しかし現代の正月は誠に花いっぱい。寒風の吹きこむ家もなく、一寸注意すればどの家でも花を楽しめるありがたい時代である。梅や福寿草は昔の唯一の正月の花物であまり高温を要しない。近頃の建物では室内温度は高いが空中の湿度はずっと少ない。したがって梅も福寿草も空気の乾き過ぎからうまく開花してくれない事が多い。
鉢土に水を与えすぎると逆に根腐れでよく開花出来ない。夜は湿った布をかけ、さらにポリやビニールで覆っておきたい。東洋的冬の園芸鉢物はオモトもマンリョウ、ヤブコウジ等も近頃の室内暖房では、空気が乾きすぎて調子が悪くなるので、いくらお目出たい植物でも室内に長くおかないように。
正月の梅は大変結構であるが長く暖かい部屋に入れておくと、葉芽がのび出してしまう。葉芽が成長しないうちに寒すぎぬ低温の所に移す。葉までのばしてしまったものは以後の管理が良くてもお正月に見事に咲かせることは困難。福寿草は根を切って植えてあるので多量のかん水と高温は株を腐らせ、これもおめでたくない。
   (辰野日報・昭和61年1月10日掲載)

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