せんてい[1]――厳冬に整枝する

果物庭木盆栽等の木物を扱う時の花を咲かせ実をならせ、姿を楽しむため年間で一番大切なのが冬の間の木の骨組みを作る整枝作業で、細部の丈の整理をするのがせんていである。この作業は樹液の流動のとまっている厳寒期にやる仕事である。特に樹液が早く動くカエデ、キウイ、ブドウは遅くも2月上旬には整枝せんていをやっておく。更に大きな切り口には必ず接ロウをしっかり塗っておく。切り口から樹液の噴き出すのが一番はげしいのは、昔オマイダマをさすのに使った“ミズキ”で、正月に幹枝を切った後、1月末から太い所は5月まで樹液を噴き出し、それに赤い菌がついてまことに気色悪いものである。キウイも3月初めに直径3センチの所を切って見たらすぐ樹液を噴き出し1日に1リットル、3月末からは2リットルで完全にとまったのは5月に入ってから。
この様に蔓性のものは樹液の吸いあげが激しく、切り口をトーチランプで焼いても癒合剤を塗っても止まらない。カエデとブドウのほかテッセン(クレマチス)の類も2月上旬までにせんていを終わる。蔓物中ノウゼンカヅラだけは4月下旬以後にせんていする。またバラも切り口からの凍みこみが激しいのでせんていは早い方が良い。一般に芽の直上部でせんていするように物の本にも指導でも書き教えられているが、寒地では大間違い。残す芽から出来るだけ上の方から切る。ブドウの場合は新梢の基部の節間は短いが、それでも2〜3芽残して上を切りとる。
   (辰野日報・昭和61年2月1日掲載)

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