せんてい[2]――キウイは厄介

キウイのせんていはブドウより厄介である。大体信州のうちでも辰野や塩尻では安全に育ってくれれば幸い。晩霜、初霜の害を受けるので私は植えない事をすすめる。キウイは果樹に慣れた人でも最高にせんていが難しい。植えて1〜2年の人は蔓を素直にのばすことを主とし、以後強く長くのびる様になったら棚に誘引する。しかし3月下旬以降でないと強く引っ張ったり曲げると折れてしまう。現在の処理としては蔓先のからみ合った所や去年実のなった上の枝が4〜5節以上のびた枝以外は全部切ってしまう。成木になった木なら太く長くのびた枝の4分の3くらいの所で先を切り落とし、3月末〜4月誘引の時に隣の枝と少なくも50センチは離れる程度に思い切って新梢の太いのを残して他は皆切ってしまう。雄株の枝は雌株の枝の4分の1以下で十分。キウイはブドウと同様にネムリ病になって長果枝でも数芽しかのびてこない事がある。それをおそれて甘いせんていをしていると何年たっても良い実はならない。
せんていとは一寸はずれるが、キウイの適地、不適地の問題である。上伊那郡内では西駒山麓高地と辰野町羽場と赤羽以北は確実に熟果を収穫出来るのは5年に1度くらいで、5年に一回はまったくの未熟果で、10月末の霜を受けてしまう。特に昔から知られている霜道では満足に育たない。暖地で多量の作付けがあるので県内の経済栽培は有利とはいえない。まあ当地では家庭果樹として楽しむ程度にした方がよい。これが20年間の結論である。雄株は雌株と開花期が一致する品種であることが必要で、4分の1で十分。隣接して植え、或る時期に雌株に高接してもよい。成木となれば根から不定芽が出てくるので、周囲は深く掘らぬことも必要。それを掘ると猫が余計に集まる。又摘果も大切な作業で、これが思い切ってやれない人は植えぬがまし。日本で一番古いと言われる雌株をかかえて年間いや面倒な事、面倒な事。普及会の方に水をさす様で申し訳ないが、深入りしない方が安全。
   (辰野日報・昭和61年2月10日掲載)

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