せんてい[4]――構造改善注意深く

太い枝や幹をストンと切り落すのは人間の手足を止血もせずに切り落すと同様で、木の生理を狂わせるのだから、前回の様な処置の方が良い事は小生もずっと経験済み。勿論大きい切り口には癒合剤や防腐剤をすぐに塗っておく。柿取りは枝が折れるから気をつけろと昔から言われ、いわゆる因業オヤジと言われている人が、よく木から落ちているが、木の幹や太い枝の芯に古い傷跡が残っていてその先に足をかけて、枝が折れるのであって、これは幹や太枝切りの時の不適当な管理と本人の不注意に基礎がある。孫子の代まで登っても折れぬような幹や枝の骨組を作るのがせんていの第一歩であり、これを整枝という。そうした安全な幹や太枝は植え付けた年からの管理が必要で、それが行われていない古木には数年以上かけて幹や太枝の構造改善を注意深くする事が大切。此の木をどうしてせんていするかと問われてすぐ返答するのは「カケダシ」の技術者学者である。
今まで高い幹や太い枝に覆れていた幹や枝に夏になって日が当ると、好天時にはその部分が60度から80度の高温になって高温による火傷で樹液の上下する皮が枯死してしまい、此の部分から先が後になって折れる原因になる。従って太い幹や枝が直射日光にさらされる様なら、先ず残った下枝をその上に誘引する。今年のびる枝が日覆にならぬ様なら、6月末までにその上面にワラやダンボールをかけて直射日光から守る。
   (辰野日報・昭和61年3月1日掲載)

あなただけの大切な本を作ってみませんか―中央印刷がお手伝いいたします

箔を使った「風林火山」の扇子をつくりました。ご覧下さい。

園芸事はじめ/信州でガーデニングを楽しむためのエッセイ集