洋ラン[5]――クンシランとその植えかえ(3)

クンシランには上品も中品も下品もある。どんな銘品でも一度凍らせたり、夏に日焼をさせると3〜4年の苦労はふっとんでしまう。生かしておくだけなら近頃の家庭や住居の中の暖房ならどこでもできる。しかし光線が不足ならば広葉で短葉のダルマ系でも細い長い葉になってしまうし、斑入系になれば斑の表現も変わってしまうし、いくら良い葉でも開花する時になって花梗がのびなかったり咲いても細い花弁で淡い色だったりするとがっかりという事になる。私の所のクンシランの主流は横浜の露木氏の系統で、ダルマ系としては葉は赤いが花の色と花弁の広さは一級である。名古屋から入手した縦じまの斑入系は基株はビールスで焼却したがその子孫に良い斑の株が出てくるが、実生数の10分の1も斑の株は出てこないし、良い斑と思う株は一人前になるのに5年以上かかる。所が咲いて見ると花の色が淡かったり細弁で、良い株はなかなか出来ない。良い斑の株が10万、50万するのは当り前という事になる。
最後にクンシランは実をつけると株が弱るという人がある。これは明らかな誤り。花の咲く前から信州では前の年の実が熟して赤くなり、熟す前の青い実と熟してからの赤い実をも観賞すれば楽しみは更に加わる。種子をまくには今年の花が終わってから前の年の実がおちるころに果を洗って洗い砂に3センチ程埋めておけば容易に生え3年後には開花する。
   (辰野日報・昭和61年6月1日掲載)

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