ササユリ[1]――栽培むずかしい

野生の桃色の花の咲くユリは日本特産のササユリ、九州コシキ島産のアカカノコユリと某所にわずかに野生のあるオトメユリである。オトメユリは最近栽培に成功して種苗商から入手出来、小型の早咲きのかわいらしいユリで一番早く咲く。
アカカノコユリは多量に栽培され、桃赤系の大輪の交配種が沢山に世界中で品種改良され栽培されている。ササユリは山形県から九州までの地質的植物分布の上で日本の植物園の特性とされる脊稜山脈のソハヤキ地域に広く分布する。西端は宮崎県と大分県境の祝子川(ホウリガワ)でこの地区のものは淡い紫に近い桃色で香りも最も高い。
昭和11年、筆者の発見で同様なものが四国の神宮ユリ、やはり濃色高香で牧野博士のニホイユリに該当する。この辺の山にもササユリは各地にあるがユリの仲間では最も栽培はむずかしい。野生の状態でも林の中の明るい所を好み、上の木が大きくなり地表に日があたらぬようになると弱ってなくなってしまう。
伊那谷の開花期は6月中旬、海抜の低い所ほど開花は早い。造林地などでは木が大きくなり地表に日が当たらぬ様になると全く姿を失い、伐木した跡地にも見受けられない。山路は日が当たるので林内でもよく生育するためある時期には山行を楽しませてくれる。しかし、発芽してから開花期までの山で採取したものの栽培は非常に困難。この時期は絶対に採取しないでいただきたい。
   (辰野日報・昭和61年6月8日掲載)

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