ササユリ[2]――移植は休眠中に

ササユリの野生は何処でも大変に減ってきているので野生のものはその場で楽しんでいただく事を希望する。球根を作るユリ科の植物の球根は生育中は前年貯蔵した球根内の栄養を使い尽くした時であるから、特に移植はむずかしい。冬の休眠中の移植は一番容易で、次いで開花後1〜2カ月以後である。ともかく茎葉が生きている時には茎の地表近くにある肥料を吸う根と球根の下に生えている太い根を出来るだけ完全に掘りとらねばならない。その掘り取り中に乱暴に扱うと茎の基部と鱗茎とが傷んだり離れてしまえば活着と翌年の生育は極めて悪くなる。どうしても欲しい場合は何か目印をしておいて8月以降で降雪前に採集するくらいの熱意を持って貰いたい。また結実した株の球根は非常に小さくなるために花や実のついた株はそれを切り落としておく事も忘れないように。
ササユリの実生法とか他の百合で行われる鱗片繁殖はユリの中では困難の方である。ササユリの種子は乾燥すると生えにくい。取播がよく、肥料けのない腐葉土と赤玉土の等量混合土に2センチくらいの深さにまく。明春はえるが普通は葉が出ずに地中に米粒の半分くらいの球根が出来、その次年に一枚葉を出す。此の一枚葉も短期間で枯れて、播いて3年目でようやく1〜3枚葉となる。初期生育の極めておそいユリで、その後も地表が雑草等で被われるとなかなか生き残れぬ弱い植物である。
   (辰野日報・昭和61年6月15日掲載)

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